セカンド・アヴェニューにひと影はない。ときどき車が勢いよく走り去る。ぴっちりした緑のセーターを着た黒人の女がこちらを向いて「ユー・ウォナ・デイト?」と言う。ハスラーだ。
道端の信号がまばたきし、今度は公衆電話が見えた。ベルが鳴っている。あなたは反射的に受話器を取る。
 しかし、受話器からは何も聞こえない。こんちくしょう。が、受話器をもどそうとした瞬間、受話器からピッ・ポッというディジタル・サウンドが聞こえはじめた。それは、やがて、ピロ・ピロ・ピロという連続的な音の流れになり、周波数をたえず変化させながらとどまるところを知らない。あなたは、不思議な快感に襲われて受話器を握ったまま立ちすくんだ。