ハウストン・ストリートからバワリーに入る。バムたちが路上にたむろしている。あの年の冬はそれほど酷しくはなかったのに、バワリー・ミッションはいつも満員だった。バムやホームレスの数がめっきり増えた。ミッションに行けばパンとスープにありつけるからだ。
あなたは、マンハッタンにあるシェルター(貧民救済施設)にはほとんど全部泊まり歩いた。いまはもうその半分以上が閉鎖された。ジェントリフィケーションというやつで、不動産業者どもがやってきて、街がやけにキラキラしはじめたと思ったら、街はヤッピーだらけになり、貧民街の取り壊しがはじまった。安ホテルが店じまいし、住むところがなくなって泣きわめくやつもいたが、おれはザマぁみろと思った。体にものを言わせて弱い者をいじめたり、強姦したりするやつらの牛耳っている拷問部屋がクレーン車に吊されたデカい鉄の玉でひとたまりもなく崩れ去るのを見るのは快感だった。あんなものはなくなった方がいい。そしてそのついでにこの街全体も木っ端微塵になっちまえばいいんだ、とおれは思った。